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2006年03月21日
症例紹介 ケース013 右上小臼歯のGBR後のインプラント治療症例 その1
わたしたちインプラントを行っている歯科医師は口の中を拝見するとき、歯肉などの表面的な形状とその中の骨の状態や形態が必ずしも一致していないということをよく考えています。それはもちろんそういうことをよく経験しているからなのですが、このケースも一度はインプラント埋入にはそんなに苦労しないであろうと考えていたのですが、いざCT撮影をしてみると、とんでもない状況になっていることがわかった症例です。改めてCT診断の大切さを実感したのでした。
<ケース013 右上小臼歯のGBR後のインプラント治療症例 その1>
まずはパノラマです。右上の5番の歯根の周りの歯槽骨が吸収しています。

同部分の拡大です。
結局動謡度も大きく、抜歯となりました。この時頬側の骨もかなり硬く保存されていましたので、抜歯後しばらく待って、治癒後にインプラントの埋入を計画していました。治癒後の状態も良好で、外からも陥没した様子もなく、さわっても硬いのです。これならGBRをしなくてもインプラントの埋入ができるだけ骨があるのだろうかと思えるほどでした。もし、口蓋側の骨が吸収されていたらGBRとの併用でも埋入可能かなと考えていました。そこでCTをいつものようにオーダーして、術前の診断にかかったわけです。


すると、どうしたことか全く骨の中は空っぽ状態!外から見えていたのは見せかけの歯肉。そして外からさわって硬かったのは周りの骨だったのです。こうなるとまずはGBRを先に行うしかありません。こういう場合の骨欠損を起こしている場合、パノラマでもデンタルでもとてもわかりにくいと思います。CTはこんな時にも威力を発揮するのです。


GBRのオペの写真です。フラップをあけてみるとCT通りの大きな骨欠損が認められました。頬側の歯根部付近には大きな骨吸収があります。肉芽をきれいに除去していくとまるでサイナスリフトのオペをしているような感じです。CTからもわかるように、側面から見えている上部の骨は上顎洞の洞底壁です。これをうち破るとやっかいなのでここは慎重にきれいにしていきます。そして、いつもの用にGBRのオペを終了しました。骨欠損量が大きいので長めに治癒期間を取ることにしました。
約11ヶ月待って、再びパノラマ写真です。

骨の吸収量は高さの点では問題なさそうです。


フラップをあけてみると骨の再生が認められました。そしてインプラントの埋入です。




今回のケースの場合、患者様の希望もあり、サイナスリフトは行わず修復を図ることにしました。ただ、骨幅には全く問題なく太いインプラントを埋入することができましたのでその点は良かったと思います。しかもインプラント体が歯根型をしているので、従来のストレートタイプのインプラントの場合は太いインプラントを埋入すると根尖部分でインプラント体が露出する危険性がありましたが、この点でも歯根型のインプラントは有利であると考えられます。
あとは骨の十分な治癒と、インプラント体とのオッセオインテグレーションを起こすまで十分な治癒期間を取ることが大切だと考えています。
投稿者 ochan_implant : 21:13 | コメント (0) | トラックバック
2006年03月19日
インプラント体のお話-その2 インプラントと上部構造のお話
前回はインプラント体の形についてお話しいたしました。インプラントの表面性状、全体の形はいろいろに改良と工夫が重ねられてきたことがおわかりになったと思います。
さて、今回はこのインプラント体と上部構造(いわゆる歯の部分)をどのようにつないでいるか?をお話しいたしたいと思います。
まずはおさらい!

インプラントのあたまの部分にはこのように『六角形』の出っ張りが出ています。通称『エクスターナル・ヘクス』。この構造はブローネマルク先生が特許を申請せずオープンにしたことで様々なメーカーが利用することができたとか???
確かにメーカー間のパーツがある程度共用できる点ではよかったかな?
この六角形の中にはもう一つ穴が開いててここにもう1本ねじが入るようになっています。

こんな感じです。この金色のねじはだいたいめがねのフレームに使われているねじと同じ大きさです。
これを歯の支台の部分となるパーツとの連結に使うのです。


そしてこの支台に歯をかぶせるわけですね。
だから、歯になる部分とインプラント体はめがねのねじ程度の細いねじでつながっているだけ なのです。
ちょっと不安になりました?
実はこれには理由があって、歯に過剰な力がかかるような場合にはこのねじが先にゆるんだり、折れたりすることで骨の中のインプラント体やその周りの骨を守っている訳なんですよね。
天然の歯には歯根膜といういわばショックアブソーバーのようなものがあるのですが、これでも過剰な力がかかってしまうと歯の周りの骨は吸収されてしまうのです。インプラントの周りにはこのような歯根膜は存在しませんので、このような危機管理機構が備わっているわけです。
もちろん、危機管理機構が備わっているとはいえ無理な設計がないよう最初から治療計画はきちんと立てる必要があります。
大月歯科医院では術前の完成予想模型を必ず作成します。これは前もって無理のないインプラント治療の構造設計を行うためでもあるのです。こうなってくるとインプラント治療はマンションやビルの構造設計と同じように、きちんと力関係の配慮を行う必要があることがおわかりになると思います。
投稿者 ochan_implant : 18:24 | コメント (1) | トラックバック
2006年03月13日
インプラント体のお話-その1 インプラントの形の変化
今回は大月歯科医院で使用しているインプラントの形についてご紹介したいと思います。インプラントといっても各社様々な工夫をこらしているのですが、大月歯科医院で使用しているインプラントはアメリカの3I(スリーアイ)の製品です。このブログにもリンクを貼ってありますので詳しいことはそちらからもご覧になることができます。
大月歯科医院でのインプラント治療にこの3I社製のインプラントを使用することにした最大の理由は...
1.アメリカで大きなシェアを誇っている。
おそらく世界中で一番インプラント治療が行われているのがアメリカだと思いますが、そのアメリカで大きなシェアを誇っているインプラントが3I。従って数々のインプラントのためのパーツの供給も安定しています。車でもあまりマニアックな外車にしたときに故障の時パーツを取り寄せるのには苦労しますよね?あれと一緒です。一番いいのは国産のでしょうが...残念ながら長い歴史と高い安定性を誇るメーカーは国内にはあまりありません。これからが期待されるところです。
2.高い成功率。
もちろんこのことは最大の理由にもなります。多いなシェアを有して多くの数が使用されていて高い成功率を誇ることは何よりも安心ですよね。
3.補償制度の充実。
このメーカーでは3I社の認定の研修コースを受講して、正しい術式に基づいてインプラントを埋入したにもかかわらず、初期のオッセオインテグレーションが得られなかった場合はメーカー保証を受けることができます。これもこの会社の自信の現れなのでしょうね。
このあたりが、大月歯科医院でインプラント治療を行うときに使用するインプラントを決めた理由です。
さて、この3I社のインプラント、ずっと同じなのかというとそうではなく、やはり様々な改良がなされて現在に至っているのです。
大月歯科医院で使用したインプラントの種類も現在のところ2種類ありまして、今ではオッセオタイトNTというタイプを使用しています。ちょうど今、この3I社製のインプラントの模型が当院にありますのでインプラント体の形の変遷を見てみましょう。



左から初期型のICE、オッセオタイト、オッセオタイトNTという順番に並んでいます。元々はブローネマルク(今はノーベルバイオケア)のインプラントのコピーのようなものだったのですが、セルフタッピング(木ねじのように自分で溝を切って中に入っていくもの)ためのICEというカッティング構造を持ったのが初期タイプのようです。この時はまだインプラント表面はつるつるの機械研磨のままです。ところが少しでも早くオッセオインテグレーションを得るために、そしてその当時は何症例と言われていた上顎の臼歯部へのインプラント治療を可能にするために表面構造への改良がなされていくことになりました。そして表面性状をサンドブラスト処理と酸エッチング処理を施したオッセオタイトというタイプのインプラント(真ん中のインプラント)が登場します。大月歯科医院ではこのオッセオタイトのころからこのインプラントを使用しています。ただ、機械研磨面のいいところもあって、感染にはつるつるの方が強いのです。おそらく細菌の足場がつきにくいのでしょう。したがってオッセオタイトでは上から3番目の溝のところまでは従来の機械研磨面が採用されています。こういうところがすごく安全と確実性を求めているなあと私が気に入っているところでもあるのです。そしてさらにオッセオタイトから、より自然の歯に近い形と埋入時の負担の軽減を求めるために改良されたのがオッセオタイトNTです。大月歯科医院でも現在はこのインプラントを使用しています。この歯根型にインプラントがなったことで、実は様々ないい点があります。わかりやすく言うと天然歯と同じような形だから上顎の前歯部や小臼歯部などの根尖部がやや狭搾した形の骨の部位に埋入しやすくなりました。これについてはいいケースがありましたので近日ご紹介の予定です。あと、なによりもドリリング(骨を削ること)の時間が従来の半分以下になりました。これはドリルの改良によるところが大きいと思うのですが、それだけ手術時間も大きく短縮され、患者様の負担も大幅に減りました。もしかすると歯を抜くよりも簡単になったかもしれないと思います。
このようにインプラント自体も少しずつ改良が加えられているのです。
次回は実際インプラントはどのようにして上にかぶせる歯とつながっているのか??について述べたいと思います。
投稿者 ochan_implant : 01:29 | コメント (0) | トラックバック
2006年03月04日
CTによる下歯槽神経の場所の特定について
以前このテーマをご紹介すると言いながら更新が行われていませんでした。今回は実際のCTのデータからどのように下歯槽神経の位置を特定するかと言うことをご紹介したいと思います。下顎のインプラント治療を行うとき、もっとも気をつけないといけないのが下歯槽神経の損傷です。これを起こすと唇にわたっての知覚麻痺を起こしてしまいますので大変です。
もちろんこのリスクを避ける上で解剖学的な充分な知識も必要となることは言うまでもありません。しかし、それだけでは不十分です。昔はパノラマレントゲン写真だけを頼りにだいたいの下歯槽神経の位置までの深さ(これは埋入するインプラントの長さに影響してきます)を計算していたのですが、これがきわめてアバウトなのです。なぜならパノラマ撮影はセッティングを行う人によりその拡大倍率が様々に変化しているからです。
したがって、インプラント治療をお考えの方は、その歯科医院がCTによる術前診断を充分行っているかどうか確かめてみられるのも、安心してインプラント治療を行えるかどうかの目安の一つとなると思います。
決して『安い・早い』を基準にすることのないように。標準的な価格から著しくかけ離れているものは先日の偽造マンションの話ではありませんが、何かあるものです。
さて、CT撮影を行っているとしても、ちゃんと解析を行わないと全く意味がありません。そこで当医院で使用しているCTの解析ソフト『10DR』をご紹介いたします。昔は当医院では某有名な○○プラントというソフトを使っていましたが、下歯槽神経の同定が困難なケースが時々あって、あんまり意味無いな..と思っていたのです。ところがこの10DRはその部分を見事に解決しており、実に良くできたソフトです。このソフト、有料版(3D版)と無料版(2D-Simple)がありまして、私は有料版を持っているのですが、もっぱら最近は無料版を使用しています。実際の臨床にはそれで十分だからです。
実際のCT解析画面はこのような感じです。

このソフトの良いところはパノラミックビューの断層ラインを自分で変えて見れるところです。今の○○プラントも可能になっているのかもしれませんが、その当時は不可能だったのです。
向かって左側のパノラマチックに見えているものがそれです。
これを断層域を少しずつ動かすと下歯槽神経の走行がよくわかるのです。わかりやすくアニメーションにしてみますとこのような感じです。

矢印が下歯槽神経ですね。こうやって神経の走行場所を特定してから、インプラント埋入場所での埋入深度の決定を行っているのです。
投稿者 ochan_implant : 08:06 | コメント (1) | トラックバック
症例紹介 ケース012 左下小臼歯の単独欠損症例 その1
最近はインプラントの単独植立ケースもずいぶんと増えてきました。これは歯を失ったときにブリッジにしてしまうよりもインプラントによる欠損補綴を選択する方が増えてきたと言うことがあります。ブリッジ→多数歯欠損→入れ歯 という悪循環を引き起こさないためにも少数歯の欠損の時から積極的にインプラントにより咬合力を負担することが重要であると私は考えます。
また、少数歯欠損の時からインプラント治療を選択することは治療コストも比較的安くすむことになりますので、是非お勧めです。
さて、今日は左下小臼歯の欠損に対してインプラント治療を選択したケースです。このケースでは以前メタルポストが入っていたのですが、歯根破折により抜歯に至った症例です。小臼歯を失う例では比較的よくあるケースだと思います。
<ケース012 左下小臼歯部の欠損症例>
このケースの場合、歯根破折により頬側の皮質骨が大きく失われていたので、いつものようにGBRを行い、頬側骨の再生を図りました。

今回も見事に頬側骨の欠損部は新しい骨が再生しています。



3i社製のオッセオタイトNTの4mmのインプラントを埋入しました。これくらいのケースだと手術時間も45分程度で終わります。
切開、縫合も簡単にすみますのでとても楽です。
隣接歯との歯軸の関係も良好な状態で埋入することができました。最近歯軸を合わせることには結構気を遣っています。
また、それを実現するためにちょっとしたテクニックもあります。それはちょっと企業秘密(?)。
さて、十分なオッセオインテグレーションのための時間をかけ、次は2次手術となります。2次手術では頬側の角化歯肉が若干少ないために、歯槽頂部分の角化歯肉を移動することにより、治療終了後のメインテナンスを行いやすくすることを図ります。


左図、歯槽頂部分には角化歯肉があるのですが、頬側にはちょっと少ない。
右図、そこでAPFを行い、頬側の角化歯肉の獲得を行う。写真はパーシャルシックネスでフラップをあけたところ。

ヒーリングアバットメントを接合し、縫合して終了。全手術時間40分。結構スムースにいけました。

ヒーリングアバットメント接合後のパノラマ写真です。
今後は補綴処置に入っていきます。